Wednesday, March 10, 2010 Login         Search    
 
  新時代の産業医   Minimize

産業医

心と身体の健康:メタボの法制化

経済的不況から、職場における人員は依然削減される傾向が強く、これに伴い就労者個人への負担増が、健康への懸念となっております。

産業医とは職場で働く人々の健康を保つことによって、働く個人と所属する組織両者の利益を確保することを求められている存在です。

 個人にとっては疾病を予防し、健康を増進することによって、労働力を維持し、その結果得られる収入や社会的な立場、さらにはその人の生きがいといったような精神的安定を保つことが利益となります。一方組織にとっては組織を構成する人々が健康であることによって、生産性を維持することが利益となるわけです。

 このため産業医は単に疾病の治療だけでなく、職場での就労時間や労働内容、人間関係など、職場で働く人の環境が、その人の疾病や健康に与えている影響を把握し、適切な労働環境を保てるように、事業者に助言、指導することが重要な職務となります。
 従来「かかりつけ医」という存在は、患者さんの生活環境や生活習慣を把握し、単なる疾病治療や、管理のみでなく、その人個人の健康を積極的に増進することを求められてきました。産業医はこのような考え方をさらに進めて、職場の特性、労働環境などを詳しく把握することで、働く人に対してより適切な疾病治療、健康管理を行うことを目指しています。つまり産業医とは職場にいて、その人が働いている職場の状況もよく理解している「かかりつけ医」だということになります。

 現実には日本では長く続く経負担は増しています。具体的には長時間の労働、責任範囲の拡大などですが、これらの過重な負担から過労死や精神的問題、疾病を生じ、最悪の場合自殺に至る、というような状況も、少なくはありません。また年功序列、終身雇用といった日本の伝統的な雇用形態も生産性の点から見直され、能率主義、成果主義的な評価が導入されることにより、結果的に就労者個人の価値観の変化、労働意欲の変化、就労者間の対人関係上のあつれきの増加、などをもたらす傾向もみられます。
 従来より日本の労働力は他の国と比べると「高い生産性」を持つとされてきました。それはある面事実だと思いますが、その実態は働く人が個人の健康や私生活を犠牲にして長時間就労することによって、生産性を維持してきたという側面は否めません。
 私が産業医として日本の大企業に赴任して、まず驚いたのは労働時間の長さでした。身体的、精神的不調を訴える人に話を聞いてみると、1日12時間以上の就労、仕事上の目標を達成するために休日も出勤するなど、身体的、精神的に疲弊してもおかしくはない状況が頻繁にみられました。このような状況は働く人個人で解決できる問題ではなく、職場における労働環境に対する意識や価値観が変わっていかなければ解決できないことです。

 産業保健とはこのような働く人と、職場の問題を把握して両者にとっての利益を確保するために産業医が行う活動ですが、この中でも特に精神的な疾病の予防、治療と精神的健康の増進は重要です。職場における精神的な問題は、症状的にいうとほとんどが「うつ状態」あるいはパニック発作などの「不安症状」です。このような症状の背景の根底には、職場における精神的負担が関与していることが多く、単に症状の治療のみでなく、就労環境を整えることで問題の解決を図る必要があります。